legend ej の繧繝彩色な「物語」: 花のある風景/アルザス・ワイン街道・コロンバージュ様式の美しい家並み

2015年7月24日金曜日

花のある風景/アルザス・ワイン街道・コロンバージュ様式の美しい家並み

前回ブログ・「夏 ラベンダーの花咲く季節/南仏プロヴァンス地方・セナンク修道院」は、セナンコル渓谷の最も奥まった場所、濃厚な桔梗色(ききょういろ)のラベンダーの花と12世紀起源の中世修道院の奏でる協奏曲が響きわたる、プロヴァンス地方の夏を代表する美しいスポットである(下写真)。


セナンク修道院 l'Abbaye Notre-Dame de Sénanque
ラベンダーの花咲く「プロヴァンス三姉妹」・セナンク修道院
南フランスのラベンダーから離れ、狭い範疇の経験論になってしまうが、ヨーロッパの身近な「花スポット」を挙げるなら、南ドイツ・バイエルン地方や「黒い森地方」、緑の草原が眩しいスイスの山岳地方、オーストリア・チロル地方や北イタリア・ドロミテ山塊地方などがある。何れの地域でもキレイな花を飾った特徴的な家並みの町や村々の独特な風情は元より、極簡単に目にできる珍しい高山植物なども事欠かない。

さらにフランスに限定して言えば、花の量と規模からして、より印象的な「花スポット」としては、先ずライン河畔の東フランス・アルザス地方を抜きに語れないだろう。「VITTEL」などミネラル水で有名な穏やかな形容の標高300m~1,000m級の山々が連なるヴォージェ山地の東側、ライン川の西側地域はアルザス地方と呼ばれている。
このエリアの春~秋の季節、築300年~400年さえも珍しくはなく、長い歴史を偲ばせる古風な民家の窓辺や階段を飾る色鮮やかな花の競演は、花好きを公言する多くの「一坪ベランダ・ガーデニング」の日本人がまだ気付いていない、繧繝彩色(うんげんさいしき)な花が放す本物の美しさ、人と花が共存する真意を教えてくれる。

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アルザス・ワイン街道 Alsace Wine Route 阿尔萨斯葡萄酒之路
アルザス・ワイン街道・ロスアイム旧市街/美しい花を飾るコロンバージュ様式の家
第一次大戦後にフランス領となり、現在では強制的にフランス語の教育が浸透しているが、古代ローマ時代から2,000年の長い歴史をひも解くと理解できるが、その大半を東隣のドイツに帰属していたアルザス地方では、5世紀頃、「黒い森地方」を本拠としていたゲルマン民族系アレマン人(アルザス人)が移住し定着したとされる。
彼らの話すドイツ語系アレマン語から派生した「アルザス語」は、第二次大戦までアルザス地方の人々の間で広く使われていた。そのため、今日でもアルザス地方の人々はフランス語が通じるフランス国内に在りながら、自分達をパリに住むフランク民族のフランス人とは違う、「アルザス人」と誇り高く呼称する。
歴史的、文化的にも人々の風習も意識の点でも、経糸(たていと)だけでなく左右に走る杼(シャトル)のボビンに巻かれた緯糸(よこいと)さえもが、ドイツ色に染色されて織り上げられているのがアルザス地方と言える。

アルザス・ワイン街道 地図
「アルザス・ワイン街道」の村々/ライン下流&ライン上流/作図=Blog管理者legend ejk

アルザス・ワイン街道・コルマール Colmar, Alsace 科尔马
アルザス・ワイン街道・コルマール旧市街/夏の夕暮れ時
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アルザス・ワイン街道・コルマール
アルザス・ワイン街道・コルマール旧市街/運河に映るコロンバージュ様式の家々

アルザス・ワイン街道・タン旧市街 Thann, Alsace 阿尔萨斯葡萄酒之路
アルザス・ワイン街道の南端・タン旧市街

アルザス地方の最大の特徴は、その地形と気象を活かした産物、駐屯した古代ローマ軍の兵士が持ち込んだと言うヨーロッパを代表する濃厚な白ワインの産地、「アルザス・ワイン街道」の小さな町と村々の存在である(上地図)。
アルザス・ワイン街道とはEU議会場のあるストラスブールの西方20kmの町マルレンヘイムからスタートして、ワイン集積地・コルマール(上写真)を経由、南方の産業都市ミュールーズの西北西20kmの伝承と歴史の町タン(上写真)へ至るまで、直線で約100km、道路総延長170kmに及ぶ範囲が含まれている。
さらに正確に言えば、スイスからオランダへ流れ下るライン川に平行するヴォージェ山地の東側、南北に延びる山麓と穏やかな裾野の地域を意味するアルザス・ワイン街道は、有数の特級ワイン・「グラン・クリュ」を産する「103か所の町と小さな村々」、それを結ぶ幅3mの農道も含む中世からの曲がりくねった道筋の別称でもある。

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アルザス・ワイン街道 Alsace Wine Route 阿尔萨斯葡萄酒之路
アルザス・ワイン街道・「フランスの最も美しい村」ウナヴィール村の広大なブドウ畑
アルザス・ワイン街道 Alsace Wine Route 阿尔萨斯葡萄酒之路
アルザス・ワイン街道・ヴォエグトリンショフェン村遠望
アルザス・ワイン街道に登録された町と村々の多くの住宅は、この地方が歴史的にドイツに帰属していたことから、南西ドイツ・「黒い森地方」の美しい街ゲンゲンバッハなどと同様に、「コロンバージュ様式 Colombages」と呼ばれる壁面に柱と梁がむき出した建築施工・「木骨組み造り」に顕著な特徴を示す。
春から始まり、夏~秋の季節まで、中世の風情をかもすアルザス・ワイン街道のコロンバージュ様式の家々の窓辺やバルコニー、手すりや階段、果ては街頭の支柱に至るまでもが美しい花々で飾られ、遠方から訪れるツーリストの心を癒す。そして幾らかの村々は世界に知られた「フランスの最も美しい村」に認定されている。

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アルザス・ワイン街道・コルマール 科尔马
アルザス・ワイン街道・コルマール旧市街/運河
アルザス・ワイン街道/クリスマス時期のコルマール旧市街 科尔马
アルザス・ワイン街道・コルマール旧市街/クリスマス時期の深夜のレストラン街
アルザス・ワイン街道・ケゼルスベール 阿尔萨斯葡萄酒之路
アルザス・ワイン街道・ケゼルスベール旧市街/コロンバージュ様式の建物
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アルザス・ワイン街道の旧市街の民家の、特に主婦や年配者が冬の終わりの時期から丹精を込めて手入れをする窓辺の花々の装飾はあまりに美しく、ヴォージェ山地を背景に波打つブドウ畑の丘陵、美味な白ワイン造りと共にあるアルザス地方の長い歴史と伝統で育まれたドイツに起源を見る民俗文化の質の高さを代弁している。

アルザス・ワイン街道・エグイスハイム村 Eguisheim, Alsace 阿尔萨斯葡萄酒之路
「フランスの最も美しい村」・アルザス・ワイン街道・エグイスハイム村/花を飾る伝統のワインカーブ
ドイツ・ゲンゲンバッハ Gengenbach, Germany 德国 黑森林地区
ドイツ・「黒い森地方」・ゲンゲンバッハ旧市街/花を飾るコロンバージュ様式の美しい家並み

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そのほかのフランス国内の経験論では、水源はフランス中央高地、石灰岩の崖を刻み蛇行しながら南西フランス・ケルシー地方を緩やかに流れるロット川がある。
日本人も含め水彩風景画を描く美術志向の人達の隠れた目的地でもあり、その佇まいが中世からまったく変化していない、ロット中流渓谷の崖上の秘境・「フランスの最も美しい村」のサン・シル・ラポピーなども、春~秋の季節、コロンバージュ様式の石積み住宅の窓辺や階段にキレイな草花が飾られることで知られている。

花を飾る民家/サン・シル・ラポピー&アルザス・ワイン街道
花を飾る民家/サン・シル・ラポピー&アルザス・ワイン街道
「フランスの最も美しい村」サン・シル・ラポピー Saint-Cirq-Lapopie
「フランスの最も美しい村」サン・シル・ラポピー

フランスの最も美しい村」に限っては、フランス国内で約32,000を数える人口2,000人以下の「村」と呼ばれる田舎の自治体の中で、歴史的建造物の有無や住民の文化遺産の保存意識など厳しい審査をパスして「美しい村」の認定を受けているのは、2015年現在、たった153か所の厳選された村だけである。
アルザス・ワイン街道では、上述写真の城壁で囲まれた人口1,850人のエグイスハイム村を初め、人口1,250人の小さな城塞村でありながら年間200万人のツーリストが訪れるリクヴィール村など、誰もが一度は訪ねたい花を飾った「フランスの最も美しい村」を代表する、丘陵のブドウ畑に囲まれた魅惑のワイン村が点在する。
ちなみに、フランスのテレビ局F2の調査、バカンスなどで滞在したいとする「フランス人の最も好きな村」では、「フランスの最も美しい村」である南西フランスのサン・シル・ラポピーが2012年1位(上写真)、同年6位がアルザス・ワイン街道のリクヴィール、2013年1位がエグイスハイム、2014年2位にアルザス・ワイン街道のアンドーがランクされている。
 

愛国心旺盛だからこそ母国の文化を嘆く訳ではないが、早春の頃、満開のソメイヨシノの下で場所取りブルーシートを敷き、缶チューハイ片手に一気飲みして「ワイワイ・ガヤガヤ」と歓喜する、春の到来に「鬱憤を放す日本人」の発散し過ぎた風土的感覚とは少し異なり、ヨーロッパの人々の花に対する美意識と感性と伝統の誇りは「大人の静かな振る舞い」のように思える。
何度訪れても、ヨーロッパの、特に東フランス・アルザス・ワイン街道のように、草原とブドウ畑の丘陵の彼方に教会堂の塔が見える、絵に描いたような穏やかな風景の地域に住む人々が、可憐な花と静かに共存している姿に出会うと不思議と心癒されてしまうのは、間違いなく私だけではないはずだ。

アルザス・ワイン街道 Alsace Wine Route
アルザス・ワイン街道・イッタースヴィラー村

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地中海カンヌの北西15kmにある香料の街グラースの天然精油メーカーなどへの販売目的で栽培しているプロヴァンス地方のラベンダー、そしてアルザス・ワイン街道の古風な家々を装飾する美しい花々から、経験論がさらに地球規模で飛躍してしまうが、野生に咲く花、いわゆる「ワイルド・フラワー」に関しては、何処をさて置いても、どう転んでも、「南アフリカ・ナマクアランド地方」を除いて語ることはできないだろう(下写真)。
現地の春の頃、地球の反対側に位置する日本では9月初め頃、ナミビア国境に接する南アフリカ・北ケープ州、ナマクアランド地方の何もない荒漠たる半砂漠カルー地帯、東西200km 南北400km、北海道の面積に相当するその途轍もなく広い乾燥大地が、正に一夜にして広大なワイルド・フラワーの絨毯(じゅうたん)と化す。
息を呑む、この世のものとは思えない不思議な光景を初めて見た人は、誰でも大自然の持つ底知れぬ生命力に圧倒され声を失い、時には感涙さえして人の持つ力や存在があまりに小さいことを悟らされる。

ナマクアランド地方ワイルド・フラワー Wildflower, Namaqualand
南アフリカ・ナマクアランド・デージーの平原
※NHK番組・「趣味の園芸」・「京も一日陽だまり屋」 放映写真に採用される/2016年10月
北ケープ州・ワイルド・フラワー平原 Wildflower, Northern Cape
南アフリカ・北ケープ州・ワイルド・フラワーの平原
花が好きでベランダ・ガーデニングをしていま~す!」と、自慢を含め尻上がり言葉で自称する人なら、一生に一度で良い、時間や予算に無理をしてでも春の乾燥大地、南アフリカ・ナマクアランド地方の荒涼たる半砂漠カルー地帯を訪れ、世界最大級のワイルド・フラワーの花咲く絶景を自分の眼で確認しておきたい。
早ければ8月下旬、平年なら9月初旬、南半球の春の時期、人の住む民家も村もなく、ただひたすらに続く地平線の彼方まで数kmとか数十kmとかが、隙間なくびっしりと約3,000種の野生の花・花・花・・・で埋め尽くされるナマクアランド地方。
まるで全地表面が漆と顔料を混合した彩漆(いろうるし)で描いた絵画のように、鮮やかに発光して燃えているような圧倒される「色絵の世界」を体感できる。これこそが「地球のグレート・ネイチャーだ!」。
狭い限られた一画に咲く、いわゆる「群生」などと言う一掴みのちっぽけな規模ではなく、地表が見渡す限り全て野生の花だらけの風景。誰の管理もなく、工場で化学合成された窒素・リン酸・カリウムの液肥など一滴も存在しない、毎年、純粋な自然環境下で織り上げられる広大なナマクアランド地方の花の絨毯、≪花の魔術≫を自分の目で見ずして自慢げに「花の話」はとてもできない。


標高700m~1,000m、時折姿が見える野生のサバンナ小動物以外に人が誰も居ない、人工的な音のまったく聞こえない乾燥した静寂の世界。ただ微風に揺れるワイルド・フラワーだけが果てしなく咲き誇る大自然の壮大なスペクタクル。その≪花の魔術≫に酔いしれる時、大げさではなく、人は「人生が変わる」と感じる。
花咲く風景を眺め、圧倒され、その感動の大波から「人生が変わる」と思えるチャンスは、騒音著しい人口密集の東京や大阪の都市部で普通の生活を送っていたのでは、小指を立ててどれほど優雅でリッチに気取ったところで、残念ながら一生涯巡って来ることはないだろう。
そんな、大げさに・・・」と鼻で笑うなら、上述の現地写真、人の手がまったく入っていない荒野で可憐な花びらを付けた野生のナマクアランド・デージーが、人知れず花を咲かせている風景をじっくりと見てもらいましょう!
信じられないかも知れないが、このような驚異の光景が数kmも数十kmも延々と続いている事実を知ってしまった後でも、それでもやはり香りがまったく消えてしまった品種改良花の鉢植えを植物ガーデンやホームセンターで買い求め、それらを横並びに配置して水やりする「一坪ベランダ・ガーデニング」のささやかな喜びに拘りますか?

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南アフリカ・プレトリア/ジャカランダ Jacaranda, Pretoria 比勒陀利亚 蓝花楹花
南アフリカ・プレトリア/街を青紫色に染めるジャカランダの花
さらに追加して話すなら、ナマクアランド地方の乾燥した地表面を鮮やかな原色で覆う3,000種のワイルド・フラワーと並び、それよりわずかに遅れた時期、南アフリカ・行政首都プレトリアの街全体を青紫色のアクリル絵の具で染める満開の「ジャカランダの花」も、地球の大地と植物が奏でる壮大なる生命力の協奏曲、自然が放す驚異なる≪花の魔術≫と言えるだろう。
日本が誇る熟練した造園職人の技も遠く及ばないほど、緑濃い常緑樹の街プレトリアの丘陵を活かして青紫色に見事に織られたジャカランダの花の景観は、まるで太めの毛糸を使ってアイルランドの女性達が編む500年の伝統あるアラン・セーターか、立体感を強調したリボン刺繍の紋様のようだ。花の色こそ異なるが、プレトリアの春の季節は、日本なら3万本のシロヤマザクラの淡紅色の花が乱舞することから、古来より「一目千本」と形容される奈良県吉野山を染める山桜に右肩並ぶ美しい絶景と言えるだろう。

世界には、日本人がまだ知らない圧倒的に美しい野生の花の咲く場所が存在する。街で購入した花弁の色は鮮やかだが香りの消えた品種改良花に満足しながらも、どうせなら人生のある時期にたった一回でも、地平線まで咲き誇る3,000種のワイルド・フラワーが放す強烈な野生の源香で鼻炎症になるほど、世界最大級の野生の花だけで織り上げられた絨毯、本物の≪美しい花のある風景≫を「見ておいて良かった」と、晩年に眼を閉じ静かに追懐できる人生を送りたい・・・

●関連Webサイト: 海外旅行1,200日・世界47か国 旅人legend ej の世界紀行・心に刻む遥かなる「時」
legend ej の世界紀行
●過去のブログ:
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イタリア: 「花の都・フローレンス」で観たボッティチェリ作・フレスコ画≪受胎告知≫
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フランス: 夏 ラベンダーの花咲く季節/南仏プロヴァンス地方セナンク修道院
       花のある風景/アルザス・ワイン街道・コロンバージュ様式の美しい家並み
       南西フランス・ケルシー地方・「フランスの最も美しい村」サン・シル・ラポピー
       「フランスの最も美しい村」ゴルド/南仏プロヴァンスの「極上の美しい眺め」
南アフリカ: ジャカランダの花咲く南アフリカ・プレトリア/「花の魔術」のナマクアランド地方
EU諸国: ヨーロッパの「最も美しい街」は? 経験論からⅠ部(北欧~中欧~東欧)

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