2016年7月31日日曜日

世界遺産・北イタリア・ドロミテ山塊/大自然の造形美 「雄大なる讃歌」

ドロミテ山塊 Dolomiti/2009年 UNESCO「世界遺産」登録

2009年、その特徴的な地形と地質学的に稀な地域、険しく尖ったドロマイト苦灰石の山容と深く切り込んだ崖渓谷、それに対比する穏やかに波打つ広大な草原牧場、ヨーロッパトウヒなど針葉樹の森と秋に黄金色に色付く広葉樹林、宝石のようなエメラルドグリーンに染まる湖など、優しく美しい自然の景観をして、UNESCOは北イタリア・ドロミテ山塊 Dolomiti/The Dolomites を「世界遺産(自然遺産)」に登録した。

世界遺産では、おおよそ15,940平方㎞の広大なドロミテ山塊地方の全体が対象となっている訳ではなく、「9か所」に点在する主な山群・山系と周辺が現実の対象区域であり、その合計面積は1,420平方㎞(38㎞x38㎞相当=ドロミテ山塊全体の約9%)の地域に及んでいる(下地図)。
UNESCOの「自然遺産」の登録基準
一際優れた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域、生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性など、地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。
ドロミテ山塊・サッソルンゴ峰 Dolomiti Sassolungo
シウージ高原から望むサッソルンゴ峰(標高3,179m)

世界遺産・対象となる「9か所 山群・山系ブロック」 The 9 systems of the Dolomites

●関連Webサイト: 「世界遺産ドロミテ山塊」公式サイト http://www.dolomitiunesco.info/?lang=en

ペルモ山群&クロダ・デ・ラーゴ山群 Pelmo, Croda da Lago
  コルチナ南方/ぺルモ峰(3,169m)、クロダ・ダ・ラーゴ峰(2,709m)
マルモラーダ峰 Marmolada/ドロミテ山塊最高峰(3,343m)
南部ドロミテ山群 Pale di San Martino/San Lucano/Dolomiti Bellunesi/Vette Feltrine

  パーレ・ディ・サンマルティーノ、サンルカーノ渓谷、ドロミテ・ベルーネジ国立公園、ヴェッテ・フェルトリーネ保護区
  ヴェザーナ峰(3,191m)、チヴェッタ峰(3,220m)、スキアーラ峰(2,562m)、パヴィオーネ峰(2,336m)
ドロミテ・フリウラーネ(フリウーリ)国立公園 Dolomiti Friulane(Friuli)& d'Oltre Piave

  ドロミテ南東部・南カルニケ・アルプス区域/プレティ峰(2,600m)、トーロ峰(2,360m)、カッセーヌ峰(2,250m)
北部ドロミテ山群 Dolomiti settentrionali/コルチナ西方~北方~東方の最も広い区域

  トファーナ峰(3,244m)、クリスターロ峰(3,221m)、トレ・チーメ峰(2,999m)、ソラピッス峰(3,205m)
ガイスラー山群 Puez-Odle

  セチューダ高原(2,400m)、リガイス峰(3,027m)、ペイトレルコッフェル峰(2,735m)、シルシュピツェン峰(2,592m)
シーリアル自然保護区&ラテマール山群 Sciliar-Catinaccio, Latemar

  ペッツ峰(2,564m)、ケセルコーゲル峰(3,004m)、ラテマール峰(2,799m)
ブレッテルバッハ断崖峡谷 Bletterbach

  ボルツァーノ南南西15km・ヴィズホーン峰(白角山2,316m)~西方の渓谷
ドロミテ・ディ・ブレンタ山群 Dolomiti di Brenta

  ボルツァーノ南西50km・モルヴェーノ湖西方/ブレンタ峰(3,120m)

世界遺産・ドロミテ山塊/9か所・山群・山系ブロック
世界遺産・ドロミテ山塊 対象地/9か所・山群・山系ブロック/地図情報=イタリア・「ドロミテ山塊」公式サイト

厳密な意味で言えば、その突き上がった威容な山容から人気のあるサッソルンゴ峰 Sassolungo(標高3,179m)も、その東方にどっしりと居座るセーラ山系 Gruppo del Sella(標高3,152m)も、そして当然ながらコルチナ・ダンペッツォなど市街も世界遺産の登録区域ではない。
そうであっても、世界遺産に含まれない岩峰を含む、美しい針葉樹の森林、湖や雪解けの沼、清流の渓谷、さらには青空に反射する残雪、緑の牧草地や鮮やかな高山植物の群生する高原、そして点在する街と村々の花を飾った家々など、ドロミテ山塊地方の「全て」が訪れる人々の憧憬を裏切ることはない。とにもかくにも、ドロミテ山塊地方の全域が「世界遺産」に相応しい美しさと魅力を秘めた山岳地域である、と強調できる。

世界遺産・ドロミテ山塊の最高峰はマルモラーダ峰 Marmolada(標高3,343m)、そのほかトファーナ峰 Tofane (標高3,244m)など標高3,000m以上の高山は18峰を数える。高度な経験をつんだクライマーだけが登頂できるモンブラン峰(標高4,811m)を抱えるスイス・アルプス山系とは異なり、ドロミテ山塊ではその切り立った岩峰の頂上、あるいは中腹上部までゴンドラやリフト設備が整っている。
そして、さらに特徴的なのは、カラフルヘルメット姿のクライマー以外にスニーカーを履いた一般のツーリスト、マウンテンバイクの若者達、70代の高齢者やベビーカーを押す若いお母さんと子供達さえもが、極簡単に威容とも言えるドロミテ山塊の山群に直に接近できるのは驚きに値する。
この利便性はドロミテ山塊地方が近代の歴史の中でクライミング登山やハイキング、そしてスキーの最適地として開発されてきたことに起因する。結果、ドロミテ山塊地方は年間を通じて、その季節に順ずるクライマー、スキーヤー、そして自然を愛するツーリストが絶えることはない。

ドロミテ山塊地方 地図 Dolomiti
ドロミテ山塊地方/主な山群・山系&観光スポット
Map Key   町・村    
   ▲ 主な山岳
      ▲ 主な高原・峠・湖

ドロミテ山塊地方の交通/路線バス
ドロミテ山塊地方の主要スポットへのアクセスでは、個人ツーリストの場合、断然!「路線バス」が有利である。
※路線バス・便数・時刻表は季節により変更あり


●西部地区: SAD交通バス
         バス系統(下路線図⇒拡大): https://www.sad.it/it/i-servizi/la-rete-dei-servizi-su-gomma
         時刻表: http://www.sii.bz.it/sites/default/files/fahrplan2016_web_2.pdf

SAD Bus 路線バス系統
SAD Bus 路線バス系統
●東部地区: ドロミテ・バス Dolomiti Bus
         バス系統(下路線図⇒拡大): http://www.dolomitibus.it/dolomitibus/cartina.html
         時刻表: http://www.dolomitibus.it/dolomitibus/jsp/orari.jsp

Dolomiti Bus 路線バス系統
Dolomiti Bus 路線バス系統
近郊都市⇒ドロミテ山塊地方/連絡バス
※路線バス・便数・時刻表は季節により変更あり
コルチナ・エクスプレスバス/ヴェネチア~ボローニャ~コルチナ:
 http://www.cortinaexpress.it/
AUTOSTRADALEバス/ミラノ~ドッビャーコ~コルチナ:
   時刻表: http://www.autostradale.it/linee-turismo/
ドロミテ山塊地方・地名や山岳名の称呼
ドロミテ山塊地方の言語に関しては、歴史的にイタリア語系ドイツ語系が混在するため、地名や山岳名などが二つ称呼される場合が多い。この「ダブル称呼」の傾向はドロミテ山塊地方の北部エリアでより強い。外部の人にとっては若干戸惑う慣習だが、特に優先順位はなく、伝統や発音の親しみ感などから、それぞれイタリア語系・ドイツ語系の使い分けが行われている。


例: IT=Odle Gruppo オードレ山群/GE=Geisler Gruppe ガイスラー山群
   IT=Ortesei オルテッセイ/GE=St Ulrich
   IT=Alpe di Siusi シウージ高原/GE=Seiser Alm ズイザー・アルム
   IT=Bozano ボルツァーノ/GE=Bonzen
   IT=Selva di Gardena ガルデーナ渓谷セルヴァ/GE=Wolkenstein in Gröden
世界遺産・ヴェネチアの運河観光
ドロミテ山塊への南ルート玄関口の一つ・世界遺産・ヴェネチア/ゴンドラと船の行き交う賑わう夏の運河

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ドロミテ山塊の「黄金盆地」 コルチナ・ダンペッツォ Cortina d'Ampezzo(標高1,200m)

路線バス:
1)Dolomiti Bus/(ヴェネチア方面・列車)~カラルツェ・ディ・カドーレ駅~コルチナ(往復24便)
2)SAD Bus/ドッビアーコ~コルチナ(往復6便)
※路線バス・便数・時刻表は季節により変更あり

UNESCO世界遺産・ドロミテ山塊地方の中心は、60年前、1956年、「冬季オリンピック」が開催されたコルチナ・ダンペッツォである。人口約9,000人、コルチナは世界的にその名が知られた標高1,200mの高原リゾート、その市街と周囲の余りの美しさから、ドロミテ山塊の「黄金盆地」と呼ばれている。
コルチナの街は、西方にトファーナ峰 Tofana(標高3,244m)がどっかりと腰を据え、北東側にはクリスターロ峰 Cristallo(標高3,221m )を中心とした険しい連山、そして南東側には広大な山岳面積を占めるソラピッス山系 Sorapiss(標高3,205m)が迫っている(下写真)。
さらに街の南西側にはクロダ・ダ・ラーゴ峰 Croda da Logo(標高2,709m) やチンクエ・トーリ峰 Cinque Torri (五塔の意味・標高2,361m)の連山が並ぶ。コルチナは険しい山々に囲まれていながら、実は街がその山群に守られている観がある。この地形学的な景観こそが、コルチナの街を「黄金盆地」と言わしめる所以である。

ドロミテ山塊/コルチナ市街~ソラピッス山系
トファーナ峰から眺めるコルチナ市街~ソラピッス山系

アンペツォ盆地に佇む小奇麗な高原リゾートのコルチナの市街には、60年前とは言え、「冬季オリンピック」の開催地という自慢の歴史を踏まえ、今でもホテルの名称や市街を貫く大通りにも「オリンピア」の名称が使われている。
コルチナ市街は渓谷盆地を流れるボイテ川 Boite に沿って、ほぼ北西から南東方向へ細長く広がり、主要な道路や通りは渓谷と川に並行するような形容で延びている。なお、エメラルドグリーンの雪解け水のボイテ川は、途中でピアーヴェ川 Piave と合流し名称を変え、ベルーノ Belluno を経由、遠くヴェネチアの北東のアドリア海へ流れ下っている。

コルチナ市街の中心となっている石畳の通りには、18世紀の奉献、明るい淡色内装のバシリカ式単身廊、聖フィリポ(フィリップ)と聖ジャコモ(ヤコブ)を奉るゴシック様式の教会が建ち、ホテルやレストラン、カフェやみやげ物やスポーツ用品店などが軒を連ねている。また市街から少し離れた草原や針葉樹林の中、あるいは結構な斜面にもアルペン・コッテージ風の住宅、プチホテルやペンションが点在して、外観的にはスイスと共通する高原特有のオシャレな表情を見せている。
季節が春~夏~秋ならば、ほとんどすべての家々の窓辺には、茎が下垂するアイビーゼラニウムを筆頭に、ペチュニア系やペラルゴニウムなど、目にも色鮮やかな綺麗な草花が競うように飾られる。絵ハガキで良く見るアルペン木造様式の家屋と花と人が奏でる「美しい協奏曲」を披露するかのように。

ドロミテ山塊地方の「黄金盆地」のコルチナ・ダンペッツォは、アンペツォ渓谷が少し開けた標高1,200mの盆地に位置する街、中世以降、長くオーストリア・ハプスブルグ家の統治下にあった。近世にはイタリア上級階級のリゾートとして知られるようになり、経済面では西部のボルツァーノと並び、ドロミテ山塊地方の最大の交通の要衝でもあり、今日、ドロミテ・アルペン観光の基点として重要な役目を担っている。
地形と非の打ちどころのない自然環境、地中海と中央ヨーロッパとの中間位置するコルチナ、鉄道はないが交通アクセスの利便性も高く、春~夏~秋にはヨーロッパ中のクライマーを初め、サイクリングや健康志向のアウトドアー・ツーリストが、冬季にはアスピリン・スノーに魅せられた大勢のスキーヤーがどっと押し寄せる。このため年間を通じて、コルチナの街から原色のカラー・スポーツウエアを着たツーリストの姿が消えることはない。
ドロミテ山塊地方のスキー
ドロミテ山塊地方は「スキーの本場」であり、コルチナの街の周囲には訪れるスキーヤーの技術レベルに合った無数のゲレンデが開発されている。標高1,000m~2,900mまで、コルチナ・エリアだけでも100か所を越えるスキーコースが設定されている。
また、コルチナ・エリアの西隣には、荒々しいドロマイト苦灰岩の岩肌を見せるセーラ山系(標高3,152m)が広がる。セーラ山系は一塊と言うか、単独的な円形山群であるため、山系の麓に設けられた放射状の快適なスキーコースを滑走して大きく一周する「セーラ・ロンダ Sella-Ronda」も人気が高い。
右回りの「オレンジ」と左回りの「グリーン」の周遊コースがあり、それぞれ30本以上のコースを約40km滑走すれば、1日でスタート・ゲレンデへ戻って来ることもできる。当然、全コースのリフトやゴンドラなど1枚の「共通パス」でOKである。
なお、ドロミテ山塊地方全体の広域スキーに至っては、12のスキー・エリア、28か所の主要スキー場、約50を数える町と村々を周遊できる「ドロミテ・スーパー・スキー」があり、ゴンドラやリストなど合計450基、滑走距離は何と合計1,200kmに及ぶ。


●関連Webサイト: ドロミテ山塊・スーパー・スキー http://www.dolomitisuperski.com/it/skipass
参考: 2016年~2017年スキーパス(High Season) €163(3日間)・€304(1週間)

コルチナ・ダンペッツォ近郊の魅力的なスポット

憧れのトレ・チーメ・ディ・ラヴァレード峰 Tre-Cime di Lavaredo(標高2,999m)

路線バス:
1)Dolomiti Bus/コルチナ~ミズリーナ湖(往復4便/SAD Bus乗換~トレ・チーメ峰=往復17便)
2)SAD Bus/ドッビアーコ~ミズリーナ湖~トレ・チーメ峰(往復17便)
3)SAD Bus/ベルーノ~コルチナ~ミズリーナ湖~トレ・チーメ峰(往復1便)
※路線バス・便数・時刻表は季節により変更あり

ドロミテ山塊地方を訪ねたツーリストが間違いなく脚を運ぶ、トレ・チーメ・ディ・ラヴァレード峰(標高2,999m) へのトレッキング拠点は、コルチナ・ダンペッツォから北方へ約18km、標高2,300m、レストハウス・アウロンツォ・ヒュッテ Rifugio Auronzo である。なお、名峰トレ・チーメ峰を含む一帯は「トレ・チーメ自然公園」に指定されている。
コルチナからアウロンツォ・ヒュッテまで、標高差1,000mを運び上げてくれる Dolomiti Bus の路線バス(往復4便+ミズリーナ湖乗換・SAD Bus 往復17便)のほか、鉄道駅のある北方のドッビアーコ Dobbiaco からも SAD Bus の路線バス(往復17便)などが運行され、いずれも美しいミズリーナ湖畔を経由して登坂してくる(路線バス時刻表=上述サイトURL)。

アウロンツォ・ヒュッテは部屋数25=100人以上が宿泊でき、「トレ・チーメ自然公園」のトレッキングのルート拠点でもあり、食事やカフェ、サンドイッチやミネラル水、トレッキング用品なども購入できる。
バスの終点は広いパーキング場、標高2,300mのアウロンツォ・ヒュッテ周辺はすでに森林限界を超え、ドロマイト苦灰石(ドロミテ石灰岩)がむき出しになった岩峰、見晴らしがきく草原と高山植物、深く切り込む渓谷風景が展開している。このアウロンツォ・ヒュッテのバス終点までやって来ただけでも、感動・感激が衰えていない普通の人なら、間違いなく大声で「万歳三唱!」、ドロミテ山塊地方の「世界遺産の意味」を納得できるであろう。

アウロンツォ・ヒュッテ(標高2,300m)~トレ・チーメ・ディ・ラヴァレード峰(標高2,999m)へ向かう

アウロンツォ・ヒュッテから憧れのトレ・チーメ・ディ・ラヴァレード峰へ向かってみよう! 通常、最も安全で最も人気のあるコース、トレ・チーメ連山の南側を半周するトラバース的な南周回ハイキング・ルートを歩くことになる。
アウロンツォ・ヒュッテ前に立つと、整備された平坦なハイキング・ルートを歩く大勢のハイカーが見える。歩き始めて40分ほど、前方に歴史あるラヴァレード・ヒュッテ Rifugio Lavaredo(標高2,350m)が見えて来る。アウロンツォ・ヒュッテからここまで、標高差はわずか「+50m」である。
山岳救助のヘリコプター発着基地でもあるラヴァレード・ヒュッテ付近から、ちょっとだけ登り勾配となるが、整備された斜面ルートを200m、15分だけ頑張って登れば、スニーカー・ツーリストも、70歳の高齢者でもベビーカーを押す若いお母さんでも、広い鞍部のラヴァレード峠 Passo di Lavaredo(標高2,450m)へ到着できる(下写真・左下=数人のハイカーが立つポイント)。
南周回ルートでは、バスの終点のアウロンツォ・ヒュッテ~ラヴァレード・ヒュッテを経由~ラヴァレード鞍部の峠まで、山岳写真の撮影に夢中になるとか、高山植物の群生に見惚れて「キレ~イ、カワイ~イ、すご~い!」を連発して長時間の道草をしなければ、通常、おおむね1時間の歩行である。

ドロミテ山塊/トレ・チーメ峰 Dolomiti Tre-Cime di Lavaredo
ラヴァレード峠(標高2,450m)から見上げるトレ・チーメ・ディ・ラヴァレード峰
手前=Piccola 峰/中央=Grande 峰(標高2,999m)/遠方=Ovest 峰

この良く整備された南周回ハイキング・ルートの途中では、不思議なことにトレ・チーメ峰のピークをはっきりと認識できない。左側に迫る今にも崩れるような絶壁の岩肌と崩壊砂礫、右手には雄大な斜面と深い渓谷美が広がっている。そうして、標高2,450mのラヴァレード峠に立って、初めて三つに分離したトレ・チーメ峰のピークを斜め北面から眺めることができる。
上写真は、夏7月、鞍部のラヴァレード峠から眺めたトレ・チーメ峰の圧倒される絶景、これこそが「夢に見た名峰」の姿である。地球の激しい造山活動と自然が作った芸術的とも言える造形の美しさと威容さをむき出しているトレ・チーメ峰の「トレ」は、イタリア語で数字の「3」を意味する通り、山体が見事に大きく三つに割れている。
中央が最高峰2,999mの「グランデ」、一枚岩のように見えるその垂直面はヨーロッパ玄武岩のような硬度のある岩石ではなく、ボロボロと崩れやすいドロマイト苦灰石質の500mの絶壁である。写真の左下の大きな岩の向こうに見える数人のハイカーと比較するなら、そのスケール感が理解できるであろう。

上写真は広角レンズで撮影していることから、ピークが「それほど高くない」と感じるかもしれないが、絶壁の高さ500mとは東京スカイツリーで言えば、地上458mの「第二展望台」よりさらに40mほど高い。この「グランデ」の絶壁は、日本の平均的なマンションや住宅の階高3mから計算した場合、優に「160階建て」に相当する高さである。
ラヴァレード鞍部からピークを見上げる場合、目の前に3棟の「150階~160階建て」の巨大な建物が突っ立っていることに等しく、頚部が痛くなるほど仰け反り、ピークはほとんど「真上」の視野ということになる。

この圧倒される光景を「言葉を失うほどの絶景!」と言わずして、何が「すご~い!」と言うのであろうか? ただ、これは他人が撮影した写真を観るのではなく、理屈はともかく、ラヴァレード峠に立った人だけが実感できるトレ・チーメ峰の壮大にして神宿るほどの畏敬なる姿、三つ割峰が堂々と歌う「雄大なる讃歌」である。

ドロミテ山塊の高山植物 ヒメイトシャジン
ドロミテ山塊の高山植物 ヒメイトシャジン

ドロミテ山塊の高山植物 サクシフラガ・ブロオイデス
ドロミテ山塊の高山植物 サクシフラガ・ブリオイデス

今にも崩れそうだが崩れないその裸身と言うか、圧倒されるドロマイト苦灰石の無垢の岩肌をさらけ出すトレ・チーメ峰周辺には、無数に見られる色とりどりの小さな高山植物以外に、草木が確認できない雄大な山岳風景が広がっている。
トレ・チーメ・ディ・ラヴァレード峰へのハイク&トレッキング
夏の時期、トレ・チーメ・ディ・ラヴァレード峰へのハイク&トレッキングでは、天候さえ良ければ、路線バスの終点・広いパーキング場もあるアウロンツォ・ヒュッテ~鞍部のラヴァレード峠まで南周回ルートに限れば、年齢を問わず自分で歩行さえできれば、サンダル履きや通勤革靴は推奨できないが、スニーカーなど簡易的な装備で誰でも訪れることが可能である。
また、このアウロンツォ・ヒュッテ~ラヴァレード峠への南周回ルートは、最後の鞍部への登り200mを除きほぼ平坦、整備が行き届いていることから、トレッキングやハイカーのみならず、マウンテンバイクの元気な若者達、遠足の小学~中学生グループ、結構年配のご婦人のヨーロッパ・ハイカーをたくさん見ることができる。

トレ・チーメ峰への標準の南周回ルートのほか、例えば帰路に別ルートを選択するなら、ラヴァレード峠~アウロンツォ・ヒュッテ(バス終点)まで、連山の北側に展開する広大な岩盤平原と崩壊砂礫の斜面を左周回するトラバース・コースもある。
この北周回ルートは南周りのルートより約3倍の距離と若干起伏もあり、時間を必要とするが、視界は「絶景」だけ、初級トレッキング・ハイカー以上の人にはお勧めである。当然、バス終点から直接北周回ルートを使って、トレ・チーメ連山を右手に見ながら、右回りでラヴァレード峠へ向かうこともできる。


急な天候異変に注意!
注意すべきは、例えば晴天が続く清々しい真夏の季節、トレ・チーメ峰を訪れるにしても、標高2,500mの高原~山岳地帯であり、万一の雷雨など天候急変と気温低下に備え、レインウェアーやウィンドブレーカー、アウロンツォ・ヒュッテでゲットできる軽食とミネラル水は携帯必需品である。
ラヴァレード峠の鞍部の下方にはラヴァレード・ヒュッテがあり、こちらでも軽食や水の補給ができる。ただし、バス終点のアウロンツォ・ヒュッテ~ラヴァレード・ヒュッテまでの南周回ルートの途中、標高2,300mの山岳地帯、すでに森林限界を超えているので立ち樹はなく、屋根付きの小さな山岳礼拝堂がある以外、落雷など緊急避難できるような人工的な建造物は一切存在しない。

狭い経験論だが、真夏の時期、トレ・チーメ峰を訪れた数日後、ノコ歯のようにゴツゴツとした山容を誇るクリスターロ峰(標高3,221m)の中腹では、たった30分間で快晴から真っ暗な空へと激変してしまい、ピンポン玉クラスの直径3cmの雹(ひょう)混じりの、もの凄い雷雨と強風を15分間も経験した。ただ、30分ほどで真っ暗な雷雲は嘘のように消え去り、その後、南方のソラピッス連山の方角に原色の「ドロミテ虹」の大きな七色アーチが現れた。


ドロミテ苦灰岩の荒々しい山岳と優しい高原風景が同居する「不思議な舞台」
針葉樹林帯が消える標高2,000m前後で不意に現れる荒々しくも堂々たる岩肌むき出しのドロミテ山塊の山岳風景は、予告なしの突然変異とも言える「魔法の演出」と言える。世界で最も歴史的な遺産が多い首都ローマや中世ルネッサンスの街フィレンツェなど、都市部とはまったく異なるイタリアの「別な顔」が、ここドロミテ山塊地方には潜んでいる。
ヨーロッパでは華やかなスイス・アルプスの影に隠れてしまい、日本人にはまだまだ知られていないが、真夏の時期、ドロミテ山塊の最大の特徴は、ドロマイト苦灰石(ドロミテ石灰岩)地質の男性的な絶壁と荒々しい岩肌、それらに対照するかの如く展開する女性的な穏やかにして広大な草原、そして所々に点在する残雪と一面に広がる美しい高山植物の群生などの、反比例的な多様性にある。
この厳しさと相反する穏やかさの共存と組み合わせこそが、ほかの地域ではあり得ない大自然のダイナミックで独特な景観をつくり出し、しかも、誰でも容易にそれに触れることができる「不思議な舞台」を提供しているのが、ここ北イタリア・世界遺産ドロミテ山塊地方である。


ドロマイト苦灰石(ドロミテ石灰岩)の地質
ドロミテ山塊一帯は、ドロマイト苦灰石と呼ばれる石灰岩系の岩石地質で構成され、その地質特有の時候劣化と結果から出現する異様な形容に大きな特徴がある。聞きなれない鉱物名・ドロマイト苦灰石は、石灰岩の主成分である炭酸カルシウム分がマグネシウム化されて生成された岩石である。
地中海沿岸やエーゲ海の島々などを形成する一般的な石灰岩は、成分の95%が炭酸カルシウム、残りが炭酸マグネシウムとされ、一方、ドロマイト苦灰石は炭酸マグネシウムの含有量が最大45%にもなるとされる。
ほとんど炭酸カルシウムである一般の石灰岩は酸性に弱く、二酸化炭素を含む雨水に触れると溶け出し、時折、地下に鍾乳洞をつくることがある。一方、同じ石灰岩質系のドロマイト苦灰石は、炭酸カルシウムの含有量が少ないために、雨水による侵食を受け難い。
このため、ドロミテ山塊地方では鍾乳洞はほとんど存在せず、岩山は年月の経過による自然崩壊だけが起こり、崩落した細かな砂礫が岩峰の足元にフレアスカートのように裾を広げ、ゴツゴツとした異様とも言える独特な荒々しい山容を呈している。
なお、「ドロミテ」、あるいは地元イタリア語で言う「ドロミーティ」は、ドロマイト苦灰石を発見した18世紀のフランス人地質学者デオダ・ドゥ・ドロミュー Déodat de Dolomieu に由来する。


ドロミテ山塊地方と南アフリカの地質比較
ドロマイト系地質では、南アフリカ・ヨハネスブルグ近郊の、「人類発祥の地」とされるUNESCO世界遺産・「スタークフォンテン洞窟」などのマルマニ・ドロマイト地質が有名である。スタークフォンテン洞窟は南アフリカの典型的な鍾乳洞の一つで、洞窟内部と外層部から350万年前の「猿人アウストラロピテクス」の頭蓋骨や足骨化石・「Little Foot」が発掘されている(下写真)。
この洞窟の周辺一帯はドロミテ山塊地方とは異なり、炭酸カルシウム分を多く含んだマルマニ・ドロマイト地質で形成され、弱酸性の水の浸食を受けやすく、結果、付近一帯は鍾乳洞が形成されやすい地質環境にある。


南アフリカ・スタークフォンテン洞窟
世界遺産・南アフリカ・スタークフォンテン洞窟・「像の鼻鍾乳石」/猿人類の化石頭蓋骨
●関連Webページ: 南アフリカ・スタークフォンテン洞窟 世界遺産/南アフリカ・「人類発祥の地」
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9月~10月・8日間ハイキング\259,000成田№16256/アリタリア直行便/アオスタ渓谷・ドロミテ山塊・チロル山地
9月~10月・8日間\230,000羽田№16015/アヌシー~シャモニー~アオスタ~マッターホルン~ドロミテ山塊~シャンパニュ地方~パリ
9月~10月・10日間ハイキング\278,000成田№16285/アリタリア直行便~アオスタ渓谷~ドロミテ山塊~チロル山地
10月~11月・10日間ハイキング\338,000成田№16016/JAL直行便~スイス・アルプス~ドロミテ山塊~ドイツ・アルプス

美しきミズリーナ湖 Lago di Misurina/Lake Misurina(標高1,754m)

路線バス:
1)Dolomiti Bus/コルチナ~ミズリーナ湖(往復4便)
2)SAD Bus/ドッビアーコ~ミズリーナ湖~トレ・チーメ峰(往復17便)
※路線バス・便数・時刻表は季節により変更あり

ドロミテ山塊地方の中心、コルチナ・ダンペッツォから路線バスルートでトレ・チーメ峰方面へ向かう途中、コルチナの市街から国道48号は北東へ向かい、トレ・クローチ峠 Passo Tre Croci(標高1,809m)を越えると、ほぼトラバース的な高原道路となり、さらに進むと展望が一気に開け、高原に佇む美しいミズリーナ湖へ至る。
通常、コルチナに滞在して路線バスを使うツーリストでは、ミズリーナ湖を訪れ、ここから比較的近い距離のトレ・チーメ峰へのハイキング&トレッキングを1日行程のスケジュールに計画する人が多い。特に昼間の時間が長い夏の時期なら、路線バスのタイムテーブルに注意しながら、時間的にも余裕があり、内容的にも100%満足できる「万歳三唱!」の1日行程である。

ドロミテ山塊/ミズリーナ湖 Dolomiti Lago di Misurina
美しいミズリーナ湖(標高1,754m)/遠方はソラピッス連山(標高3,205m)

標高1,754m、高原のミズリーナ湖の幅は最大で200mほど、南北に約1kmと細長く、氷河やドロマイト苦灰石から流れ出た澄み切った水を満々と湛えている。針葉樹の原生林も含め、湖の周囲には標高差のない平坦な散策ルートが設けられ、ほぼ1時間で一周できる。
歩きながら、天候が晴れならば湖面に写る堂々たるソラピッス山系 Sorapiss(標高3,205m)を初め、ノコ歯のように険しく尖ったドロマイト苦灰岩がむき出しのクリスターロ峰 Cristallo(標高3,221m)、三峰の名山トレ・チーメ峰 Tre Cime di Lavaredo(標高2,999m)など、ドロミテ山塊を代表する高い峰々を手に取るように眺められる。
ドロミテ山塊の最高のスポット、東洋の国から「トレ・チーメ自然公園」までやって来て、習慣癖からスマホ画面をなぞっているようでは、人生の貴重な時間を失うことになる。ここでは大自然の「雄大なる讃歌」を自分の「耳で聴き」、その世界遺産の輝く光景を丁寧に自分の「目でなぞる」べきである。

湖畔には幾らかのホテルと花を飾ったアルペン風のきれいなペンション、レストランやカフェが点在する。夏の時期、健康志向のヨーロッパのツーリストで賑わうコルチナ・ダンペッツォの街からも幾分離れた位置にあり、路線バスのアクセスも良く、汚れのない空気、どこを見ても美し過ぎるほどの大自然に囲まれたミズリーナ湖畔での長期滞在は、心のリフレッシュメントと満足感は当然の事、遠方から来た自然を愛する憧憬ツーリストの描く過剰な期待さえも裏切ることはない。
また、ミラノの東方・ガルダ湖畔のサロー Salo を本拠とする、「Blu Hotels」系列の「☆☆☆☆ Grand Hotel Misurina」の建つミズリーナ湖の北側から眺め、波のない鏡面の静かな湖面に南対岸に建つ六階建ての黄色の「旧Grand Hotel Savoia(下記コラム)」を映し、遠方にソラピッス連山を入れる雄大なシーンは、良く語られる「生涯に一度は訪ねたい場所」として世界中に知られている(上写真=微風で波があり鏡面ではないが)。
サヴォイア家/サヴォイア公国
サヴォイア家は11世紀初めからフランス・リヨンの東方、アルプス地域~東端のイタリア・ミラノの西方まで、南端の地中海ニース~北端のジュネーヴ・レマン湖付近まで、フランス南西部・イタリア北部・スイスにまたがる山岳地域を統治したヨーロッパ有数の辺境伯貴族であった。首都はリヨン東方85kmのシャンベリ Chambéry に置かれた。
15世紀にはサヴォイア伯国から公国へ昇格となり、16世紀に長い間首都であったシャンベリからトリノへ遷都した。その後18世紀にはシチリア島(王国)、さらにサルディニア島(王国)をも統治する有力家系を継承した。
美しきミズリーナ湖の南岸に建つ絵葉書のメイン被写体、六階建ての黄色の建物・「旧Grand Hotel Savoia」は、第二次大戦後の1949年まで旧サヴォイア家の「夏の離宮」として使用されていた。

チンクエ・トーリ峰 Cinque Torri(標高2,361m)&ファルツァレーゴ峠 Passo Falzarego(標高2,117m)

路線バス:
1)Dolomiti Bus/コルチナ~チンクエ・トーリ峰~ファルツァレーゴ峠(往復9便)
2)SAD Bus/コルヴァラ~ファルツァレーゴ峠(往復10便)
※路線バス・便数・時刻表は季節により変更あり

コルチナ・ダンペッツォのバス・ターミナルから、Dolomiti Bus の路線バスを使って西方へ向かう場合、国道48号は草原と針葉樹林の中を芸術的とも言える蛇行を何回も繰り返し高度を上げて行く。右手(北側)には圧倒的な山体で覆い被さって来るトファーナ・ディ・ロゼース峰 Tofana di Rozes(標高3,225m)が見え、この登山口(バス停)で下車するクライマーもたくさん居る。
トファーナ・ディ・ロゼース峰の南山麓を抜けると、左手(南側)の針葉樹林の彼方に「五つの塔」を意味する巨大な凸奇岩のチンクエ・トーリ峰 Cinque Torri(標高2,361m)が見え、登山口(バス停=Bai di Dones)から300mでチンクエ・トーリ峰やアヴェラウ峰 Averau(標高2,649m)へ昇るリフト下駅となる。また、リフト駅の東方150mには針葉樹に囲まれたバイ・ディ・ドネス湖が佇む。
さらに国道48号は蛇行を繰り返して高度を上げ、ファルツァレーゴ峠 Passo Falzarego(標高2,117m)へ到着する。コルチナ市街~ファルツァレーゴ峠まで16kmの距離、バス所要30分強だが、標高差1,000mを一気に運び上げてくれる。

広いパーキング場やレストハウスを備えたファルツァレーゴ峠は東西分水嶺の一つ、コルチナ側の Dolomiti Bus の折り返し終点であり、また、コルヴァラ Corvara やボルツァーノなど西部地域で運行する SAD Bus の折り返し終点でもある。ファルツァレーゴ峠はクライマーに人気のあるスポット、パーキング場は東西方面からやって来るカラフル・ヘルメット姿のクライマーや展望観光の大勢のツーリストで賑わいを見せる。

ドロミテ山塊/ファルツァレーゴ峠~ガリーナ山~アヴェラウ峰 Dolomiti-Passo Falzarego-Gallina-Averau-Civetta-Pelmo
ピッコロ・ラガゾォーイ展望台から南東方向を眺める
アヴェラウ峰やチヴェッタ峰など標高2,500m~3,000m級の魅力的な峰々がトレッキング・ハイカーの憧憬を誘う

ピッコロ・ラガゾォーイ展望台 Poccolo Lagazuoi(標高2,752m)

ファルツァレーゴ峠にはクライマーのためにスタッフ常駐の「アルペン・インフォーメーション」があり、天候やトレイルなどのリアルタイムのトレッキング情報を提供している。東西分水嶺であるが、ファルツァレーゴ峠は広く平坦、峠の交差点の北側には大型ロープウェイが施設され、10分ほどで標高2,752mのピッコロ・ラガゾォーイ展望台へ運び上げてくれる。
ピッコロ・ラガゾォーイ展望台では、周囲360度を見渡すことができる。先ず北東側には広い岩盤平原が広がり(冬はスキー場)、それを立ち塞ぐ絶壁のファーネス連山(標高2,989m)(下写真)、東方には標高3,200m級のトファーナ峰トファーナ・ディ・ロゼース峰の連山が迫り来る。
そして南東方角には2,500m~2,600m級のガリーナ山 Gallina やアヴェラウ峰 Averau、その遠方にはペルモ峰チヴェッタ峰の連山などドロミテ山塊を代表する3000m級の峰々が鋭利な山容を主張している(上写真)。

ラガゾォーイ展望台から南西方向へ15km先には、ドロミテ山塊の最高峰3,343mのマルモラーダ峰 Marmolada もはっきりと見える(下写真)。さらにその手前には第一次大戦の激戦地で有名となった山岳陣地、イタリア軍陣地のコル・デ・ラーナ峰 Col di Lana(標高2,452m)とオーストリア・ハプスブルグ軍陣地のシエフ山 Mt Sief(標高2,424m)が対峙する(下写真)。
現在でもラーナ峰とシエフ山を含め、その北方のチーメ・セツァス峰 Cime Setsas(標高2,571m)や同じような山容のサッソ・ストリア峰 Sasso Stria(標高2,477m)、ラガゾォーイ展望台の直ぐ足元で博物館があるヴァルパローラ峠 Passo Valparola(標高2,200m)周辺などには、第一次大戦当時の塹壕や居住陣地などが残り、人気のある史跡トレッキング・コースとなっている(下写真)。
また、ファルツァレーゴ峠の周辺一帯は「州立アンペツォ自然公園」に指定され、山岳だけでなく深い渓谷や湖沼、戦争史跡や中世城砦跡、そして美しい針葉樹の森林が広がっている。なお、ラガゾォーイ展望台の周辺は、シルヴェスター・スタロン主演の1993年作品、映画≪クリフハンガー≫の撮影地の一つでもある。

ドロミテ山塊/マルモラーダ峰・セーラ山系 Dolomiti Marmolada-Sella
ピッコロ・ラガゾォーイ展望台から南西方向を眺める
直ぐ下方=ストリア峰~ヴァルパローラ峠/左遠方=マルモラーダ峰/右遠方=セーラ山系

ドロミテ山塊/ラガゾォーイ展望台~ファーネス連山 Dolomiti Lagazuoi-Fanes
ラガゾォーイ展望台から眺めるラガゾォーイ渓谷~垂直壁のファーネス連山

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トファーナ峰 Tofane(標高3,244m)

アクセス: コルチナ市内・ロープウェイ(下駅)~(中間駅)~(頂上駅・標高3,200m)

コルチナ・ダンペッツォ周辺で最も標高があるのは、市街の西北西にそびえるトファーナ峰(標高3,244m)である。コルチナ市街の北側、かつて「冬季オリンピック」に使われたスケート競技場の直ぐ近くから運行されている大型ロープウェイに乗り込む。途中標高2,500m付近の中間駅で乗り換えれば、標高3,244mのトファーナ峰のほぼ山頂へ一気に運び上げてくれる。
天候と高山特有の気温低下に注意すれば、スニーカーなどの軽装でも標高差2,000mを30分ほどで、誰でも容易にトファーナ峰の山頂へ登ることができる。この手軽さがドロミテ山塊の魅力であり、経験のクライマーだけが登れるスイス・アルプス(下写真)と違う大きなメリットである。

スイス・イタリア国境・ベルニーナ連山&氷河
夏7月 スイス・イタリア国境・ベルニーナ連山・Piz Palü峰(標高3,901m)/手前(スイス側)=Morteratch 氷河

スイス・ベルニーナ渓谷・ビアンゴ湖~イタリア国境山岳
スイス・ベルニーナ渓谷・ビアンゴ湖~イタリア国境山岳(左遠方=Scima da Saoseo 3,264m/右遠方=Piz Sena 3,075m)
渓谷と湖畔を走る人気の Bernina Express 鉄道はヘアピンカーブしながら南東の「ブルシオ Brusio ループ石橋」へ向かう

コルチナ市街の西北西に構えるトファーナ峰の頂上は比較的広く、ここから眺める北西側対面のファーネス峰 Fanes(標高2,989m)を初め、夏でも残雪を抱く2,700m~2,800m級の連山のむき出した褶曲地層や垂直の絶壁、引き込まれそうなトラヴェナンゼス渓谷 Val Travenanzes の雄大さは非常に美しい(下写真)。

ただし、ドロミテ山塊全体に言えることだが、高山特有の気温低下には最大限の注意が必要である。高山の気温低下は色々な条件が複雑に絡むことから論理値だけの断定は難しいが、一般的には「標高が100m上がる毎に0.6℃低下する」、標高3,000m以上の場合では「標高が152m上がる毎に1℃低下する」とされる。
例えば、夏、標高1,200mのコルチナ市内で25℃の乾燥した快適な気温であっても、ロープウェーを使いトファーナ峰へ昇る場合、30分で一気に標高3,200mまで上昇することになり、計算上、気温が12℃~13℃も低下する。風も加われば頂上部の気温は10℃前後となる。足元はスニーカーや初級トレッキング・シューズでも大丈夫だが、Tシャツや短パン姿など論外、最低限でもウインドブレーカーやレインウエアを携行して着用すべきである。

ドロミテ山塊/トファーナ峰頂上からトラヴェナンゼス渓谷
トファーナ峰頂上(標高3,244m)から1,300mも落ち込むトラヴェナンゼス渓谷の眺め
対面は残雪が輝く標高2,700m~2,900m級のファーネス連山

快晴の夏の時期、濃厚な紺藍色の空、清清しい風が吹くトファーナ峰の頂上で過ごしていると、ファルツァレーゴ峠からロープウェイでピッコロ・ラガゾォーイ展望台に昇り、岩盤状のトレッキング・トレイルを通り、ピラミッドのような美しいトファーナ・ディ・ロゼース峰 Tofana di Rozes(標高3,225m)の頂点に立ち、直ぐ隣のトファーナ峰までトレイルする山岳ガイド&クライマー・グループが沢山やって来る。
天候も良く、トファーナ峰の山頂から展望は抜群、「Pokémon GO」のキャラクターは、スマホ画面にかじり付いて自分の住むそれぞれの市街で探すとして、ここでは数百m先の垂直岩場に挑戦するカラフル・ヘルメット姿のクライマーを双眼鏡で追う多くのスニーカー・ツーリスト達が目立つ。
天候が安定した夏のトファーナ峰山頂では、目的とアクティヴの実践こそ異なるが、絶壁に挑む完全装備のクライマーと防寒対策をした比較的軽装のスニーカー・ツーリストが同居する。それぞれのクライミング&トレッキング・レベルで、あるいは山頂での眺望だけにこだわるのも自由、各自の異なる条件と目的をしてドロミテ山塊の大自然に対面、360度の全画面が自分の足元にあり、その余す所のない「雄大なる讃歌」を満喫するのである。

また、ロープウェイの中間駅ラ・ヴァレース Ra Valles(標高2,500m)で下車することも可能である。中間駅から少し離れた見晴らしの効く場所に構える円形型のレストハウスで食事やカフェもできる。背後にそそり立つトファーナ峰、前面には見渡す限りのアンペツォ盆地の雄大な絶景が展開している。
レストハウスでハーブティーか生ビール、美味しいイタリアン・パスタやソーセージ料理を注文して、標高2,500mから眼下に広がるコルチナ・ダンペッツォの市街を眺める。東方の正面に堂々と立ちはだかる3,200m級のクリスターロ連山、コルチナ市街の向こう側のソラピッス山系の圧倒される雄姿に感動すれば、ドロミテ山塊の魅力のかなりの部分に触れたことになり、ハイカーはここでも感動・感激で「万歳三唱!」となる(上述・コルチナの項&写真)。
冬季には、森林限界を超えた樹木のまったくないレストハウスの周辺は、毎年、「ワールドカップ」の滑降競技も開催されるアスピリン・スノーの広大なスキー・ゲレンデとなり、コルチナ市街まで標高差1,300m、下方の林間コースと合わせて数kmのロングラン滑走も可能である。

ファローリア高原 Faloria(標高2,100m)&クリスターロ峰 Cristallo(標高3,221m)

コルチナ・ダンペッツォのバス・ターミナルの東側にも大型ロープウェイが施設され、標高3,200m級のソラピッス山系の中腹棚のような広大なファローリア高原 Faloria(標高2,100m)へ連絡している。草原と針葉樹林で構成されたこの高原は、雪の季節は中級クラスの素晴らしいスキー・ゲレンデとなり、一方、春~夏~秋にはソラピッス山系へのルート拠点となり、トレッキングやハイカーがロープウェイから続々と下車して来る。
ファローリア高原からは、コルチナ市街を越えて西北西にどっしりと構えるトファーナ峰、さらに北方へ視線を移せばヨーロッパトウヒの針葉樹林帯を越えて、ノコ歯状の険しい山容を誇るクリスターロ峰(標高3,221m)の連山が手に取るように眺められる(下写真)。

ドロミテ山塊/クリスターロ峰 Dolomiti Cristallo
ファローリア高原(標高2,100m)から望むクリスターロ連山(標高3,221m)

ドロミテ山塊・針葉樹林
ドロミテ山塊・針葉樹林/ヨーロッパトウヒ(欧州唐檜)

コルチナ・ダンペッツォから美しいミズリーナ湖やトレ・チーメ峰へ向かうバス・ルート・国道48号(Dolomiti Bus 往復4便)を使った場合、途中の標高1,650m付近のリオ・ゲーレ Rio Gere で下車して、バス・ストップの直ぐ脇からリフトに乗り込めば、クリスターロ峰への中間登山口であるソーリ・フォールシア展望台 Sori Forcia(標高2,200m)へ昇ることができる。
展望台から更に小型立ち乗りゴンドラを使ってクリスターロ主峰(標高3,221m)の西側、2,850m付近のキレット(鋭く切れ込んだ鞍部)へ昇ることも可能である。このキレット鞍部から中間展望台へ下る超急斜面は、ドロミテ山塊で「最高難度スキーコース」として知られている。

また、クリスターロ山系からファローリア高原方面(その逆も)へのトレッキング・トレイルは、鬱蒼としたヨーロッパトウヒの針葉樹林帯を抜け(上写真/下記コラム)、ドロミテ山塊では当たり前の無理のない安全なルートが無数に設定されている。路線バスとロープウェイやリフトを上手に使えば、体力負けしないで色々な方向から雄大な風景を眺め、至る所で大自然の驚きの感動を覚えることができる。この険しいクリスターロ連山は、ファルツァレーゴ峠周辺と同様に、映画≪クリフハンガー≫の撮影地の一つでもある。
ドロミテ山塊/脚で「登る」より施設を利用して「楽チン・トレッキング」
露岩の峰々だけでなく、針葉樹林帯の静けさや草原と岩場や深い渓谷の共存、マイナスイオンのしぶきを立てる清流、澄み切った濃厚な青空、汚れのない空気・・・
ドロミテ山塊地方の特徴は、スイス・アルプスと異なり、標高3,000m級の険しい峰々の頂上や尾根や1,000mの絶壁の上端などへも、年中フル運転のロープウェイリフトが延びている。重装備のアルペン・クライマーでなくとも、天候と高地の気温低下に注意と対策を取れば、スニーカーなどの軽装ハイカーでも、誰でも簡単に目的地へ到達することができる点である。
本格的な装備のカラフル・ヘルメット姿のクライマーを除き、一般のスニーカー・ツーリストや初級トレッキング・レベルでは、各自の体力にもよるが、ドロミテ山塊では登りをゴンドラやリストを使って標高を稼ぎ、下りルートを歩行するという「楽チン・トレッキング」が標準である。
日本のように汗を流して登りも下りも根性で歩行していたら、疲労も重なるし、時間を失い無数に設けられた素晴らしいトレッキング・コースのほんの一部しか踏破することができない。ここドロミテ山塊では日本的な「根性トレッキング」は脇に置いて、完備された機動力施設を活用してより効果的な「楽チン・トレッキング」を選択すべきである。


どう行動しようとも、ドロミテ山塊での選択権はツーリスト自身に委ねられ、それぞれの目的と期待が裏切られることは絶対にない、確実に100%満足できる、と声を荒げて私は強調したい。
そうであっても1週間程度の滞在では、ドロミテ山塊のほんの「触り」の部分しか見ることができないくらい、この山塊地方は余りに広いのである。路線バス、リフトやゴンドラなどの安全な輸送施設をフルに使って、ドロミテ山塊の整備されたハイキング・ルートやトレッキング・トレイルを手軽に思う存分歩行できるように、現地のすべての関係機関は、ルート地図の配布やコースの設定と標識の設置、休憩ベンチや安全木柵など、ツーリストとアルピニスト向けに効果的な環境整備を行っている。


故に無数に設けられたリフトやゴンドラなどの移動施設に、スニーカー・ツーリストとクライマーが一緒に搭乗する風景が、ここドロミテ山塊では何の違和感も覚えることはない。日本のように、特に山岳地帯の大自然は、完璧な装備と長年の経験ある限られた人だけが触れることができる、という特殊な登山感覚はここドロミテ山塊には成立しない。
若者達に混じり70代と思しきヨーロッパの年配のご婦人達が、華やかな絵柄のTシャツや赤や黄色のパーカーを羽織って、濃厚サングラス、ストックとトレッキング・シューズ姿で草原やガレ場などをトレイルしている光景は、真にスポーツを楽しむ健康的で美しい姿と感じる。
夏のドロミテ山塊地方は、ヨーロッパの「白夜」のお陰で日の出は早いし、太陽が沈むのは20時過ぎ、その分日中の活動できる時間が余るほどあり、クライマーや観光ツーリストにとってたいへんと有り難い。
しかも雨の降らない地中海の北側の位置、夏場の天候は毎日晴れが続き、爽やかな乾燥した風が吹き、アウトドアーには安定した良過ぎる気象である。


ドロミテ山塊を覆う針葉樹ヨーロッパトウヒの森
ドロミテ山塊の森林帯を覆うのはクリスマスツリーにも使われる常緑針葉樹ヨーロッパトウヒ(ドイツマツ Picea Abies/マツ科唐檜)である。特に有名な森林帯はドロミテ山塊の南西端の街トレント Trent から最高峰マルモラーダ峰の北西の村カナツェイ Canazei へ切り込むフィエーメ渓谷 Val-di-Fiemme 産のトウヒとされる。
ドロミテ山塊のトウヒはピアノを初めヴァイオリンやチェロなどの楽器材としても使われ、さらに中世ヴェネチアの舟のマストは、全て強靭性に富んだドロミテ山塊のトウヒが使われたとされる。
また、歴史的にはドロミテ山塊のトウヒは400年の昔から、繁栄の水の都ヴェネチアの街(上述写真)を造るのに無くてはならない基礎材料であった。徹底的に管理され生育した10m以上のトウヒの丸太を浅瀬と湿地に打ち込み、その上にヴェネチア市街の建物や広場を「乗せる形」で造成した。このため、現在ではヴェネチアの多くの区画で地盤沈下が顕著であるが、かつて中世ヨーロッパの一大事業であった。

ガルデーナ渓谷の周辺の魅力的なスポット Val Gardena

ガルデーナ峠 Passo di Gardena/Grödner Joch(標高2,136m)

路線バス:
1)SAD Bus/ボルツァーノ~オルテッセイ経由~ガルデーナ渓谷~ガルデーナ峠(バス便多数)
2)SAD Bus/コルヴァラ~ガルデーナ峠(往復10便)
※路線バス・便数・時刻表は季節により変更あり

オシャレな高原リゾート・コルヴァラ Corvara と「ドロミテのリビエラ」と呼ばれるガルデーナ渓谷セルヴァ Selva di Gardena/Wolkenstein in Gröden との中間に、あまりの開放的、雄大な眺望が自慢のガルデーナ峠 Passo di Gardena/Grödner Joch(標高2,136m)がある。
ガルデーナ峠の南側にはドロマイト苦灰岩の荒々しくも広大なテーブル・マウンテンを造形する3,000m級のセーラ山系 Gruppo del Sella が迫る。一方、峠の北側は夏には開放的な草原に、真冬になればこの斜面全体がサラサラのアスピリン・スノーで覆われ、斜度15~20度前後、ギャップのまったくない草原のロングスロープの広大なスキー・ゲレンデと化す。
東方のコルヴァラと西方のセルヴァへ下るスキーコースの長さはおのおの4km、これでもドロミテ山塊地方では極普通のスキースロープである。なお展望が抜群のガルデーナ峠のスキー・ゲレンデは、ドロミテ山塊の観光パンフレットの「冬の定番風景」となっている。

ドロミテ山塊/ガルデーナ渓谷とサッソルンゴ峰 Dolomiti Val Gardena-Sassolungo
ガルデーナ渓谷の正面にサッソルンゴ峰(標高3,179m)がそそり立つ
草原と針葉樹林を貫き国道243号が蛇行しながら渓谷を下る

汗をかかない乾いたヨーロッパの微風が吹く真夏、ドロミテ山塊の絵のように美しい景観が目の前に展開するガルデーナ峠に立ってみよう! 抜けるような紺藍の青空、流れる白い雲、強い紫外線、ドロマイト苦灰岩のグレーの岩肌と遠くに近くに荒々しい山容の山々が続く。
そして、穏やかなカーブを描く草原と点在する針葉樹の森、眩し過ぎる陽光など、この一帯には夏の高原に必要な全ての自然条件が、「これ以上ないぞ!」とばかりに準備されていることに気づく。その光景は途切れることのない You Tube 動画のように、それは見事なる大自然の原色シーン、目の前で延々と雄大に展開し続ける。

ガルデーナ峠に立つと、南側には押しつぶされそうに迫り来る巨大なセーラ山系の岩壁、一方、北側を眺めればスキー・ゲレンデの草原が広がり、その上方には南側のセーラ山系とは異なる山容、ギザギザの刃こぼれしたようなV字に切れ込んだキレットをむき出したシルシュピツェン連山 Cirspitzen(最高峰 グラン・シール Gran Cier 標高2,592m)が立ち塞がっている(下写真)。
そして、ガルデーナ峠から東方へ下る極端なヘアピンカーブの国道243号とその周辺に広がるスキー・ゲレンデの草原(下写真)、一方、峠から西方へ下るガルデーナ渓谷 Val Gardena の彼方には、ドロミテ山塊地方を代表する堂々とそそり上がるサッソルンゴ峰 Sassolungo(標高3,179m)の東壁面の雄姿が控える(上写真)。
主役が揃い、あまりに出来上がり過ぎた絶景シーン、これこそがドロミテ山塊の「雄大なる讃歌」であると思う。この周囲の比類のない迫力シーンをして、ガルデーナ峠はおそらくドロミテ山塊地方で「最も展望の美しい場所」の一つと言えるだろう。

ドロミテ山塊/ガルデーナ峠とシルシュピツェン連山 Dolomiti Passo di Gardena & Cirspitzen
ガルデーナ峠に迫るシルシュピツェン連山のキレット群(標高2,592m)
左方=ガルデーナ渓谷/右方=コルヴァラ方面/国道243号

ドロミテ山塊/ガルデーナ峠~コルヴァラ Dolomiti Passo di Gardena-Corvara
ガルデーナ峠から眺めるコルヴァラ方面/蛇行する国道243号

セチューダ高原 Seceda(標高2,000m~2,500m)

アクセス: オルテッセイ市内・ロープウェイ(下駅)~(中間駅)~(頂上駅・標高2,480m)

ガルデーナ渓谷の中心地・標高1,200mのオルテッセイ Ortisei/St Ulrich から北東方向へ昇る大型ロープウェイは、中間駅で一回乗り継ぎ、20分ほどで一気にセチューダ高原 Seceda の山頂駅/展望台(標高2,480m)へ運び上げてくれる。
山頂駅の展望台とその周辺までなら、冬の雪の季節を除き、天気が良ければスニーカーなど軽装でも十分である。ただし、標高があり夏でも曇天の場合など気温が急激に下がることがあり、ハイカーやツーリストはウィンドブレーカーやレインウェアーなどを携帯することを求められている。

冬季には、牧草地であるこの一帯は、セチューダ山頂駅/展望台から遥か下方のオルテッセイやサンタ・クリスティーナ村へロングラン滑降できる最高のスキーコースが設定される。一方、春~夏~秋の季節には、牧草地は色々なレベルのトレッキング・トレイルとなり、点在するヒュッテを結び下方の村々へと延びる。
また、本来牧草地であるが、展望台のすぐ前に展開する広大な斜面は、春~初夏の頃、紫・赤・黄色など全面が見事な「お花畑」と化すと言う。私が訪れたのは夏7月、すでにほとんどの花は終わりを告げていたが、まだ一部に黄色系の小花が高原の優しい風に揺れていた(下写真)。

ドロミテ山塊/セチューダ高原からサッソルンゴ峰 Dolomiti Seceda-Sassolungo
セチューダ高原のお花畑(標高2,400m付近)/遠方=サッソルンゴ峰(標高3,179m)

見渡す限りの草原が続く標高2,480mのロープウェイ山頂駅/展望台の東方2,5kmには、不規則に刃こぼれしたノコ歯のようなグラン・フェルメーダ峰 Gran Fermeda(標高2,840m)がそびえ、その東方背後にはガイスラー(オードレ)連山 Geisler Gruppe/Odle Gruppo(標高3,027m) の峰々が控えている(下写真)。
夏のセチューダ高原から360度、どの方角を見ても、その風景はあまりに美しく雄大である。一方で花咲く緑の草原の優しさがあり、それに相反するかの如く浸食ドロマイト苦灰岩で形成される荒々しい岩山群が直ぐ背後に控える。この二つの真逆な要素の共存に何の不思議さをも感じず、むしろ両者が見事なハーモニーをかもしているドロミテ山塊の放す、「雄大なる讃歌」と不思議さに感動する。

ドロミテ山塊/セチューダ高原&ガイスラー連山 Seceda & Geisler Gruppe
セチューダ高原(標高2,400m付近)から眺望するガイスラー連山(標高2,700m~3,000m)

夏7月、まだ幾らかの高山植物の花が咲き残っているセチューダ高原からガルデーナ渓谷を挟んで、遠く8km先の標高3,179mのサッソルンゴ峰が手に取るように眺められる。空気が澄み渡り、可愛い花を付けた高山植物を揺らす乾いた夏の高原の微風が気持ち良い。日本の、東京など都会の忙しい日常社会に疲れた心と身体の中まで洗われるような幸福感に思わず眼を閉じる。


セーラ山系 Gruppo del Sella/サッソルンゴ峰 Sassolungo と周辺

荒々しいセーラ山系 Gruppo del Sella(標高3,152m)

素晴らしい風景を提供しているガルデーナ峠(標高2,136m)、その直ぐ南側には今にも崩壊しそうなドロマイト苦灰岩の荒々しい岩肌を見せるセーラ山系の岩崖が迫り来る(下写真)。
緑の麓から急激にそそり上がる中腹部は非常に険しい形容だが、セーラ連山のアッパー部は東西6kmにも及ぶ広大な円形テーブル・マウンテンを形成して、中央部に「最高峰3,152m」の突起状のピークがある。垂直に立つ岩肌には険しさを象徴するような、えぐれた大規模な縦溝ガリーが連続的に見える。
このガルデーナ峠付近では、針葉樹が消える森林限界が標高2,000m前後、高山植物など草類が生育できない植物限界は標高2,500m前後とされ、このセーラ山系の岩肌が露出している中腹、崩壊砂礫がフレアスカートのように広がる付近が丁度植物限界線となる。

ドロミテ山塊/ガルデーナ峠とセーラ山系 Passo di Gardena & Sella
ガルデーナ峠(標高2,136m)に迫るセーラ山系の垂直壁
左方=コルヴァラ方面/峠レストラン/右方=ガルデーナ渓谷

サッソルンゴ峰 Sassolungo(標高3,179m)&シウージ高原(ズイザー・アルム 標高1,800m~2,000m)

ドロミテ山塊を代表する雄峰、写真の被写体で人気度ナンバー・ワンであるサッソルンゴ峰は、眺める場所により色々な山容を見せてくれる。それだけ連山が複雑な山容と構成となっている。
先ず、セチューダ高原から眺めるドロミテ山塊の雄、サッソルンゴ峰の山容は、ウシ科に分類されている大型ヤギのジャコウウシとか、鬣(たてがみ)の雄ライオンなど、何か大型動物がどっかりと膝を付いて休んでいるような、目立ち過ぎるほどの貫禄十分の雰囲気がある(下写真)。

一方、上述のガルデーナ峠からのその雄姿は東壁面のドカーンとした台形を見せ付けている。しかし、サッソルンゴ峰の北側、ガルデーナ渓谷の中心地の一つ、オルテッセイから南方の丘へ連絡するロープウェイで登る標高2,000mの広大なシウージ高原 Alpe di Siusi(ズイザー・アルム Seiser Alm)から眺めるそれは、他とはまったく異なるゴツゴツとした連山のようで、思わず別な山かと勘違い違いするほどの山容である(下写真)。
何れの方角から眺めてもサッソルンゴ峰の圧倒される姿は、麓を取り囲む穏やかな緑の草原や深い針葉樹林帯とのコントラスト対比で余りに美しい。この荒々しい「動」と心休まる「静」の風景が同居する大自然こそ、ドロミテ山塊地方の最大の特徴であり、他所で類を見ない最高の魅力と言える。

ドロミテ山塊/セチューダ高原からサッソルンゴ峰 Dolomiti Seceda-Sassolungo
セチューダ高原(標高2,400m付近)から眺望するサッソルンゴ峰(標高3,179m)
右遠方=シウージ高原~シリアール自然保護区・ケセルコーゲル峰(標高3,004m)の連山

ドロミテ山塊/シウージ高原~サッソルンゴ峰 Dolomiti Alpe di Siusi-Sassolungo
シウージ高原(標高2,000m付近)から眺めるサッソルンゴ峰

広大で穏やかな高原丘陵を成すシウージ高原(ズイザー・アルム)を例に取れば、ほかのエリアと同じように、至る所にハイキング・ルートとトレッキング・トレイルが設定されている。
特に人気のトレッキングでは、シウージ高原(ズイザー・アルム)から正面のサッソルンゴ峰(左峰)&サッソピアット峰 Sassopiatto(右峰・標高2,969m)の麓を目指す、さらに西麓をトラバース周回しながら北側の村サンタクリスティーナ St Cristina へ下りる。
あるいはサッソルンゴ峰の南東側にあるセーラ峠 Passo Sella(標高2.244m)から入山して、立ち乗り垂直ゴンドラを使って鞍部へ登り、峰の南方へ下る周回ルートを経由してサンタクリスティーナへ、または垂直ゴンドラの鞍部から南方のシウージ高原(ズイザー・アルム)へ向かい、大型ロープウェイでオルテッセイ Ortesei/St Ulrich へ下るルートなど・・・
トップ写真、そして上写真の撮影ポイントからサッソルンゴ主峰まで直線で約7kmである。距離は結構ありそうに見えるが、サッソルンゴ峰の麓周辺まで約5km、草原と針葉樹林の中をスニーカー・ツーリストや家族連れでも問題ないように、なだらかなハイキング・ルートが設定されている。
しかも、ルートのどの場所からでも見晴らしが効き、設定ルートから外れることはなく、春~夏~秋のそれぞれの季節、天候さえ良ければ誰でもドロミテ山塊の魅力を100%満喫することができる。真夏の陽光は紫外線が強く眩しい、濃厚サングラスは必需品だ。

フネス渓谷 Val di Funes(標高1,300m)

路線バス:
1)SAD Bus/ブレッサノネ(ブリクセン)~サン・ピエトロ~サンタマッダレーナ(往復12便)
2)SAD Bus/クラウセン(キューザ)~サン・ピエトロ~サンタマッダレーナ(往復4便)
※路線バス・便数・時刻表は季節により変更あり

上述したセチューダ高原から眺める時、ギザギザ稜線を描く険しいガイスラー連山の北側には、完全装備のクライマーだけに近づくことが許される崩壊の深い崖が刻まれている。さらに標高を下げれば、針葉樹林帯と穏やかな牧草地に囲まれたフネス渓谷の高原の村、ドロミテ山塊で「最も美しい風景」を見せると言わる標高1,300mのサンタマダレーナ村 St Maddalena/St Magdalena へ至る。
一般のツーリストは、ボルツァーノ北方のブレサノネ(ブリクセン Bressanone-Brixen)の鉄道駅か、クラウセン(キューザ Clausen-Chiusa)の鉄道駅から運行される SAD Bus の路線バスを利用して美しい村サンタマダレーナへ行くことができる。
輝きの夏が終わり、色鮮やかな紅葉が始まる秋のサンタマダレーナ村から、幾らかの民家と村の聖マダレーナ教会堂を、あるいは広い草原に単独で佇む聖ヨハネ礼拝堂を手前に入れて望む、粉雪で化粧したガイスラー連山の背景構図は、ヨーロッパの輸入カレンダーで必ず使われる「美しい定番フレーム」の一つになっている。
群を抜く大自然の素材が計算したかの如く最もたる場所に配置されたドロミテ山塊の造形美、人と大自然との共存、何とバランスのとれた美しくも「雄大なる讃歌」なのか!

サンタマッダレーナ村&ガイスラー連山
ヨーロッパを代表する美しい秋の風景/サンタマッダレーナ村とガイスラー連山
写真情報=By Roberto Robotta

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